生活保護制度と起業に関するルール・知識
生活保護制度下で起業を目指す前に、必ず理解しておくべき制度のルールと制約をまとめています。
福祉事務所との関係、収入申告、資金調達制約、監視体制など、起業の成功を左右する重要な知識を体系的に整理し、制度の枠の中でどう起業を進めるかを解説します。
目次
制度の前提と認識の違い
- 生活保護は「命の保証」を目的としており、「資産形成」や「幸福の補助」は制度の趣旨ではない。
- 起業を目指すにあたっては、この前提を理解し、制度の限界を踏まえて慎重に進める必要がある。
- 福祉事務所の職員(ケースワーカー)は「雇用による自立」を前提とした常識の中で動いており、起業についての理解が十分でないことが多い。
- 「生活保護を受けるより総合支援貸付を受けて返済する方がよい」と提案されるケースもある。
福祉事務所との関係と申請
- 起業を行うには、事前に事業内容を福祉事務所へ申請し、「自立の見込みがある事業」であることの承認を得る必要がある。
- ケースワーカーがネットビジネスを内職レベルと誤認し、自立の見込みなしと判断されることもあるため、説明や資料準備が重要。
- 月1万5千円以下の収入であれば保護費の減額はないが、収入申告は必須。
- 申告を怠ると不正受給と見なされ、保護停止や3倍返還などの重い処分が下される可能性がある。
- 収入が発生した時点での申告が必要。あとからまとめて報告する形はトラブルの元。
起業に対する監視と制約
- 起業には、自由裁量で動ける面がある一方で、福祉事務所の監視や制約も伴う。
- 少額でも収益化が始まれば申告義務が発生し、月1万5千円を超えれば控除後に保護費が減額される。
- 基礎控除:1万5千円までは全額控除、超える分は9割が保護費から差し引かれる。
- 経費控除は可能だが、すべてが認められるわけではなく、合理的で必要な支出のみ。
- 収支報告・帳簿の提出が必要になる場合もあり、簡易な経理知識が求められる。
金融資産・照会・監視体制
- 銀行口座・生命保険などは一括照会制度により福祉事務所側から確認可能なため、隠してもいずれ発覚する。
- 法人口座や屋号口座に資金を移したとしても、実質的な管理者が本人であれば申告対象。
- 法人保有については、株式会社では不可とされる場合が多いが、NPO法人や合同会社であれば例外的に認められたケースもある。
生活保護下での資金調達と制約
- 生活保護中に多額の貯蓄を持つことは制度上難しく、原則20万円程度(伝聞では50万円まで)を超えると保護打ち切りの可能性がある。
- 保護費を起業資金として積み立てることは原則NG。ただし「自立のための目的貯蓄」として申請し、認められることもある(ただし、かなり稀である)。
- お金の貸し借りは禁止。借りた場合は福祉事務所に同額を返還する義務があり、返済と合わせて二重の負担となる。
融資・資金援助の可能性と限界
- 保護中は事業目的の融資を原則受けられない。
- 自己破産歴があっても、日本政策金融公庫の「再チャレンジ支援融資」は、保護を抜けた後であれば対象になる可能性があるが、審査は厳しい。
- 起業後、保護を抜けたあとであれば、日本政策金融公庫や民間融資、クラウドファンディング、エンジェル投資家からの出資などを狙うことは可能。
その他の制度的な注意点
- 投資(FXなど)の収益は臨時収入扱いで控除なし。損失は考慮されない。
- 物販(例:メルカリ等)の場合、送料や材料費は経費として申請可能。ただし証明が必要。
- 税金(特に国税)の滞納がある場合、生活保護中でも時効にはならず、支払い義務は残る。
- 自宅を事務所とする場合、福祉事務所から用途の指摘を受けることもある。
- 自治体によって制度運用の違いがあるため、同じ内容でも判断が異なる場合がある。
まとめ:制度理解と戦略的活用
- 起業は生活保護制度の趣旨と緊張関係にあるため、制度の理解と戦略的運用が不可欠。
- 最終目標が「保護からの脱却」であることを明確にし、信頼関係を築きつつ、段階的な実績作りで自立に繋げていくことが現実的な方針となる。