その他の制度的な注意点

生活保護制度下での起業には、投資収益の扱い、物販の経費証明、税金の支払い義務など、細かい制度的な注意点が数多く存在します。
このページでは、自宅起業の制約や自治体による運用差など、制度運用の実態と対応策を詳しく解説します。

投資は“収入”、損は“無視”

投資で得た利益は、たとえ一時的なものであっても「臨時収入」として扱われます。

たとえばFXや仮想通貨で一万円でもプラスが出れば、そのまま収入認定され、保護費からの減額対象になります。

一方で、損失が出た場合は「生活に必要でないリスク行為」と見なされるため、一切考慮されません。

この非対称性は、「運用も自己責任」とする制度の思想に基づくものです。

つまり、投資で得をしても損をしても、制度上は“保護にふさわしい行動だったかどうか”の視点で処理される。

お金を増やす目的での投資は、生活保護という制度の中では、きわめて慎重に扱うべき領域と言えるでしょう。

物販の経費は証明が命

メルカリやフリマアプリなどを使った物販は、生活保護下でも比較的取り組みやすい起業手段の一つです。

実際、材料費や仕入れ、梱包資材、送料などは経費として申請可能とされています。

ただし、ここで見落とされがちなのが「証明の必要性」です。

「たぶんこれくらい使った」「送料はいつも自腹だから」で済ませるのではなく、レシート・領収書・記録の保存が重要です。

また、例えば送料を自分で負担する形だと、売上はあっても実質赤字になるケースも少なくありません。

“儲かっているように見えて、実は収入減になる”という事態を避けるためにも、物販を行う際は、記録と利益計算をワンセットで考えることが欠かせません。

税金は逃れられない、たとえ保護中でも

「生活保護を受けている間は税金が免除される」という話を耳にすることがあります。

これは半分正しく、半分は誤解です。

保護を受けている間に新たに発生した税金については、原則として減免や猶予の対象となるケースがあります。

しかし、保護を受ける前から滞納していた税金については、支払い義務が残ります

特に国税(所得税・消費税など)は、生活保護中でも時効にならず、免除もされません。

さらに言えば、これらの税金は自己破産をしても「免責の対象外」とされるため、法的に“逃げ切る”ことはできないのです。

つまり、「今は支払い能力がない」としても、「いつか払えるようになったときに、ちゃんと支払ってもらいますよ」というのが制度のスタンス。

過去の滞納は“過去の責任”。制度はそれを帳消しにはしてくれません。

自宅起業はグレー、慎重に

生活保護を受けながら起業する場合、自宅をそのまま仕事場として使うケースは多く見られます。

特に在宅で完結するネットビジネスや物販では、作業スペースが“生活空間と一体化”しているのが自然です。

しかし、場合によっては福祉事務所から「自宅の使用用途」について指摘を受けることもあります。

たとえば、「物品の大量保管」「来客が多い」「電気・水道の使用量が急増」など、通常の生活を逸脱した事業活動が見られる場合です。

これは制度上、「保護費は生活のための支援であって、事業用施設への補助ではない」という原則があるためです。

とはいえ、どこからが“生活の延長”で、どこからが“商用利用”になるかの線引きはあいまいで、最終的には福祉事務所の裁量に委ねられます。

だからこそ、自宅起業を行う場合は、「誤解を与えない工夫」と「事前の相談」が重要になります。

自治体によって対応が違う?制度の“運用差”という現実

生活保護制度は全国共通の制度であるはずなのに、実際に受ける対応や判断は地域ごとに驚くほど違うことがあります。

同じ事業内容でも、「この自治体では認められたのに、あちらでは却下された」といったケースは珍しくありません。

これは、制度そのものの“運用”が各自治体や福祉事務所の裁量に強く依存しているためです。

中には「制度としてはNGではないが、前例がないから通さない」というような“空気の壁”に阻まれることもあります。

その一方で、丁寧に説明し、信頼関係を築いた結果、想像以上に柔軟な対応をしてくれたという事例もあります。

大切なのは、「ルールの文言」だけを見るのではなく、「その地域の運用の癖」や「担当者との関係性」も含めて、現場ごとに読み解いていく姿勢です。

まとめ:抜け道を探すより、“抜け目なく”整えていく

生活保護制度には、明文化されているルールと、実際に現場で運用されている“空気のルール”があります。

この違いを「不公平だ」と感じたくなる気持ちも、よくわかります。

けれど、だからといって“抜け道”を探すのではなく、むしろ“抜け目なく整えていく”ことこそが、制度の中で前向きに生きていく鍵になると私は思います。

説明の準備をし、記録を取り、制度の趣旨を理解し、誠実に申請する――そうした一つ一つが、後々大きな安心感につながっていきます。

そしてそのためにも、普段からケースワーカーとの関係を良好に保っておくことを、私は強くおすすめします。

制度は冷たくても、人はあたたかい――そう思える場面が、きっと訪れるはずです。