福祉事務所との関係と申請
ケースワーカーは制度上の担当者である前に、感情を持つ一人の人間です。
敵対的な態度を取れば「制度の範囲内で容赦なく」収入源を断たれることもあれば、信頼関係を築けば柔軟な対応や前向きな提案を受けられることもあります。
このページでは、筆者自身の失敗体験から学んだ、ケースワーカーとの関係性の築き方と申請のポイントを具体的に解説します。

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関係性がすべてを左右する現実
生活保護制度の中で起業を目指すとき、意外に見落とされがちなのが「ケースワーカーとの関係性」です。
申請や報告といった“制度の手続き”に目を向けがちですが、実はそれ以上に、この関係性がその後の運命を左右すると言っても過言ではありません。
制度の枠組みは共通でも、運用の細部や助言の内容は、担当者によって微妙に変わることがあります。
そして実際に、ケースワーカーと信頼関係を築けている人ほど、「制度の中で最大限に前向きな提案」を受けている光景も珍しくありません。
制度は冷たいものではなく、人を通して運用されている――この視点が、起業を考えるうえで非常に重要なのです。
敵対から生まれた反撃と代償
かつての私は、ケースワーカーに強い反発心を抱いていました。
制度に縛られ、こちらの気持ちを理解しようとしない制度の番人としか見えていなかったのです。
しかし、起業が軌道に乗り始めた頃、思わぬ落とし穴が待ち構えていました。
提出した資料やその解釈の細部を後出しで突かれ、裁量の範囲で露骨に厳しい判断を受け続けたのです。
その後も執拗な粗探しが続き、メンタルを病み、事業を続けられなくなりました。
今振り返れば、それは私自身の“敵対的な態度”への静かな反撃だったのかもしれません。
制度のルールを守っていても、相手も感情を持つ人間。関係性を軽んじた代償は、あまりに大きなものでした。
そこから学んだ付き合い方
あの出来事以降、私はケースワーカーとの向き合い方を根本から見直しました。
制度上の担当者である前に、相手も感情を持つ一人の人間――
そう認識を変えたことで、関係性は驚くほど変わっていきました。
それまでは気づかなかったような提案や、ちょっとした相談ごとへの柔軟な対応など、「こんなに違うのか」と思う場面が増えていったのです。
役所は“申請主義”が基本で、困っていても「言わなければ動かない」仕組みです。
でも、関係が良好であれば、「こういう制度もありますよ」と先に教えてくれることもある。
何か問題が起きたときも、見て見ぬふりをしてくれたり、やんわりと助け船を出してくれることさえある。
ケースワーカーは味方になりうる存在――
それを知ってから、私は制度の見え方そのものが変わりました。
制度の原則:申請主義と説明責任
生活保護制度は、「申請主義」と「説明責任」という2つの原則で成り立っています。
困っていることがあっても、自分から言わなければ始まらない――それが制度の仕組みです。
特に起業を行う場合には、「どんな事業をするのか」「どのくらいの収入が見込まれるのか」など、具体的な説明と資料提出が求められます。
単に「起業したい」と言うだけでは、理解を得ることは難しいのです。
また、ネットビジネスなどの場合、「内職」や「副業」程度と誤解されがちであるため、丁寧な説明が重要になります。
自立への意志をきちんと形にして見せること。それが、制度の中で“前に進むための鍵”なのです。
まとめ:関係と戦略の両立
制度のルールを理解し、必要な説明や申請をしっかり行うこと。
そしてそのうえで、ケースワーカーとの信頼関係を丁寧に築いていくこと。
どちらか一方だけでは不十分で、両方をバランスよく意識することが、生活保護下での起業には欠かせません。
制度は一律でも、対応は人によって変わります。だからこそ、敵対ではなく“協働”という姿勢で臨むことが、結果的に自分の助けになります。
そしてこれは、将来起業をしたときにもきっと役立つ力です。
どんなビジネスであっても、信頼や誠意は人を動かす最大の資産です。
人との関係を丁寧に築く力は、自分のステージを上げることにもつながります。
起業を目指すのであれば、制度の中でのこうした経験こそが、土台として何よりも価値ある“準備”なのかもしれません。
補足:制度の運用は「人」によって変わる現実
生活保護制度は全国共通の法律に基づいていますが、実際の運用には一定の幅があります。
担当するケースワーカーの理解度や、説明を受けた際の印象、計画書の内容や説明の仕方によって、対応が大きく異なることもあります。
そのため、誰がどこで相談しても必ず同じ結果が得られる、というものではありません。
ときには、本人の意欲や背景を汲んで前向きな対応をしてくれるケースもあれば、制度の枠に厳格に沿った判断が下されることもあるでしょう。
しかし、だからといって「どうせ通らない」と諦める必要はありません。
説明の工夫や、信頼関係の築き方次第で、見える景色は大きく変わります。
たとえば、健康上の理由から満員電車での通勤が困難な方にとって、在宅で働ける起業は、就職以上に現実的な自立の道となりえます。
それは決して特別なケースではなく、状況に即したごく真っ当な選択肢です。
あなた自身の状況や意志、そして伝え方によって、制度の中で開かれる可能性も確かに存在しています。
制度を「無理」と決めつけず、使える形にしていく。その視点が、何よりも大切です。